備忘録、その4の2。
まだ、手術の日のこと。
病院を出た時の私は、溢れる涙を止めることができなかった。ただ流れる時間に、存在すべきでない私がポツリと、居てしまっているような感覚。
きっとただ心細かっただけでなく、あんなに「仕事なんてどうでもいい」「なんでもする」といっておきながら、連絡すら見ない彼に、絶望していた。
でもまだ私は、彼に会いたいと思っていた。ごはんどうする?と聞かれ、私はお言葉に甘えたいと答えた。あれが、私の最大限の甘えだったのだ。
彼は遅くなるといった。不器用な人だと思った。今思えば、「ごめん、どうしても統括部長に話をしなきゃいけなくて。」その一言が、そういう気の利いた一言がないだけで、人は信頼を失うことになるのだ。彼はそれが出来ない。やり方をきっと知らない。
20時頃、彼はコンビニで大量のものを買ってきた。玄関先で帰ろうとした彼を、私は予定通り引き止めることができた。
彼は部屋のはじに座り、私がご飯を食べるのを見届けてくれた。私は正直、いらないコンビニの豚汁をすすりながら、たわいのない話をした。
結果から言えば、私は彼を完全に好きでなくなった。彼が家を出た時、好きではなかったなと確信することができた。
私は、自分の意見を押し付ける奴が大嫌いだ。人の性格ややることを、批判することでしか生きられない人が苦手だ。
彼は、まさにそういう人だった。
そういう人だったからこそ、付き合いたいと思えなかったんだということを、やっと。思い出すことができた。
よかった。これで、私は彼に何1つ未練なく、関係を終わらせることができる。
同期の女性が言う通りである。我々の直感は、大概間違っていることが多い。というか正解だったことなど一度たりともない。そういう誤った感情に、無駄な時間を費やしてきた。
私は彼を、直感的に好きだと感じてた。自分の意見を押し付けるし、人の話を聞かないし、何を考えてるかわからないのに。落ち着いた声が、なんやかんや顔や仕草や表情が、頼りなさが、好きだと思っていた。
〜だから好き、は恋。〜なのに好き、は愛。
とかほざいたやつは誰なんだ。どちらにせよ好きでも愛でも、もうもはやなんだったんだよこの数ヶ月。そう思いながらその日は布団に入った。
私の感情の問題なのだろうか。
またしばらくの間、私は人を好きになれないことを悟った。
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